「0ってほんとにすごい数字だと思うんだ」
僕が言う。君は不思議そうに聞く。
「0がすごいの?どうすごいの?」
僕は説明を始める。こういう話を興味を持ってくれる人の存在は貴重だ。
「たとえば、机の上に林檎が1個とバナナが2個あるとするでしょ。そのとき机の上には何が何個ある?」
君はちょっと不思議そうに答える。
「え?だから、林檎が1個とバナナが2個でしょ」
「うん、そうだね」
僕はさらに続ける。
「僕がその机から林檎を一つとると、机の上には何が何個ある?」
当たり前じゃない!という態度で君は答える。
「林檎がなくなるから、バナナが2個だけでしょ」
「うん、そうだよね。そのとき、林檎が0個とかっていわないでしょ。普通、なくなったらそれはもう数えない。でも、何もない時にはじめて0って使うんだ。こういう数字ってすごいと思わない?」
君はなんだか不満そうだ。
「別にいわなかったけど、林檎が0個、バナナが2個っていってもいいじゃん。そんな特別な事じゃないでしょ」
僕は答える。
「うん、たしかにね。始めに林檎とバナナがあったからそういう表現に疑問は感じないかも。でもね、その机の上にはみかんも0個、スイカも0個、はさみも0個、家も0個、地球も0個、太陽も0個あるんだ。」
僕は続ける。
「そこにないものでも、何かについて考えるだけで、その数が0個あるっていってしまえるんだ。この世に存在するそこにはないものが、すべてそこに0個あるんだ。これってすごくない?他の整数には出来ない事だよ」
君は少し満足そうな顔になった。
「なるほど、0のすごさが少し分かったよ」