僕のすべてをささげた期末テストで、僕は二番でした。それまでにあった幾つかのテストも僕はすべてクラスで二番、いつも一番は高橋徹でした。
僕は、一度だけでいいから一番が取りたいと期末テストに向けて猛勉強をしたのです。
テストがあることは分かっているし、期末テストならテスト範囲も予想しやすかったですし、数ヶ月前から準備することが出来ました。
教科書を何度も読み返し、演習問題もテストの一月前にはすべて解いていました。
そのせいもあって、宿題が出された時に友人から頼られることが多く、そういった時に人に教えていくのもいい復習になりました。
それからも、幾つかの問題集を購入し勉強を続けました。
高橋がどれほど勉強しているのか僕は知りません。けれど、彼のとる点数はいつもほとんど満点で彼を超えることを考えると一問も落とせないかもしれない。そういう思いで、僕はずっと勉強していました。
勉強もはじめてみるとなかなか面白ささえ感じてくるもので、テスト前の一週間はほとんど一日中勉強していました。テスト前日にもなると、教科書にある出題されそうな演習問題の解答はほとんど暗記しているほどでした。
テストが終わった時は、言葉にできないような達成感に浸っていました。
手応えは十分でした。自分でも今までで一番よく出来たと感じましたし、きっと高橋を超えることが出来ただろうとも思っていました。
結果は700点満点のテストで僕は683点でした。僕の中では非常にいい成績でしたし、
「平均点は480点ぐらいかな。今回はちょっと難しかったかもしれないな」
といっていたので、さすがの高橋でもいくつか間違えただろうと思ったのもあって、結果を渡してもらった時は、これならば一番かもしれないと期待もしました。
結果を返してもらった後の休み時間で、高橋に結果を聞きにいきました。
「俺は、697点だった」
といっていました。何か悔しさも吹き飛ぶような点数を言われたので僕は呆然としました。
彼は天才なんだなと納得するだけでした。
「僕は、一度でいいから高橋よりいい点取りたかった」
僕は高橋に言いました。
「森垣はすごく勉強してたらしいね。みんなが噂してた。ただ、俺はほとんど勉強してないんだ」
森垣というのは僕の名前です。彼の言葉は、ただの謙遜というより本気でそういっているように聞こえました。
「じゃあ、なんで解けるんだよ。効率がいいとか?」
僕は不思議に思って聞きました。
「テスト・・・。何となく解けちゃうんだよ。知識問題とかも、授業中に言われたことをほとんど覚えてしまっているから、あんまり勉強しなくてもわかっちゃうんだ」
彼はもしかしたら、天才という枠組みからも外れているのかもしれない。そんな風にすら考えさせられる言葉でした。
険しい山道をいくら登っても、羽ばたいている鳥には届かないのです。ましてや、その遥か上空を飛ぶ飛行機なんてほとんど見えもしないのでしょう。
努力では到底届かないものがあるということ、僕は思い知らされました。僕がいくら汗を流して山を登っていったとしても、彼は悠々と空の上から僕を見下ろしているのでしょう。
僕はそれでもいいと思います。届かないところには届かなくても。